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最強タンデム ドーセット&ウォーカー

ロジャー・ストーバック引退後の「ミスター・カウボーイズ」はトニー・ドーセットでしたが、1980年代半ばにはピークを過ぎたであろうと思われる年齢に達していました。後継者を確保する必要がありましたが、強豪であるがゆえにドラフト高順位指名権はなく、また彼ほどのゲームブレークランナーがおいそれといるはずもありません。そこでカウボーイズは、なんとUSFLでプレー中のハーシェル・ウォーカーを85年のドラフト5巡で指名したのです。これはUSFLがほどなく破綻するであろうという読みに基づく英断でした。この読みはものの見事に当たり、翌86年にウォーカーはカウボーイズのユニフォームを着ることになります。

このニュースは私を驚かせましたが、その心中は期待と不安が織り交ざった複雑なものでした。峠を過ぎたドーセットがウォーカーにポジションを奪われてしまうのではないかと危惧したのです。しかし開幕戦のスターティングメンバーには、二人揃って名を連ねていました。これは凄い! ともにハイズマン受賞者で、カレッジフットボール史上で一二を争うRBが同時にフィールドに立ってタンデムを組むとは夢のような出来事です。ウォーカーをリードブロッカーにドーセットが走る姿など誰も想像できなかったでしょう。

ところがこの夢はあっけなく潰えてしまいます。開始早々ラトラル気味のパスを受けたドーセットがサイドライン沿いを快走、絶妙のフェイクとカットバックでディフェンダーをかわしてTDを上げたまでは良かったのですが、エンドライン際でタックルされ転倒して膝を痛めてしまったのです。これが思いのほか重傷だったようですが3試合欠場したのみで復帰したのは、もしかしたらウォーカーにポジションを明け渡しくないという焦りのせいかもしれません。この怪我以降彼の走りからは全盛期のキレが失われて衰えが隠せなくなり、カウボーイズのオフェンスはウォーカー中心に組み立てられることになります。つまりドーセットがパフォーマンスを落としてしまったという意味で、史上最強タンデムは僅か数プレーしか実現しなかった… 結局ドーセットは翌シーズン後デンバー・ブロンコスに放出されることになるのです。

あの怪我さえなければ夢のようなオフェンスを、もっと長く見ることができたと思うと返す返すも惜しまれます。ドーセットの選手寿命も数年延び、ウォルター・ペイトンの通算ラッシング記録(当時)を更新していたかもしれません。

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Posted by hiro