ミッドウェイ海戦たられば
1942年6月5日、日本海軍はミッドウェイ海戦で惨敗して太平洋戦争の帰趨が決まりました。敗因として楽観的すぎる見通しに基づく作戦の杜撰さ、優先攻略目標の不徹底、暗号解読を含めた諜報力の差、絶好のタイミングでガラ空きの上空に現れた米艦爆隊の幸運などありますが、やはり敗れるべきして敗れたと言わざるを得ません。暗号が解読されていたことを予測しろとは言いませんが、あらゆる可能性を考慮してしかるべき連合艦隊司令部に、驕りからくる思い込みがあったと思います。
私が思うに、兵力の集中運用を怠ったのが最大の問題です。AF作戦は米空母を引きずり出す陽動と解釈するなら理解できますが、連合艦隊司令長官山本五十六大将は何故機動部隊から500km以上後方にいたのでしょう。これでは戦局に何ら寄与できません。しかも戦艦7隻を含む大艦隊ですから貴重な燃料を浪費しただけです。短期決戦に活路を見い出す他なしとして軍令部の反対を押し切り作戦を実施した山本大将が、こんなに消極的な運用をした真意が全くわかりません。早くから航空主兵論を掲げていた彼が艦隊決戦を志向したはずはなく、そもそも真珠湾攻撃で米戦艦の無力化には成功し、新型戦艦は太平洋に存在しないか未就役です。残敵掃討の為だけなら過大です。
要するに、彼がこの海戦を乾坤一擲のものと考えるならば機動部隊に随伴するべきでした。ミッドウェイへの空襲を機動部隊から発進させるのは賛成です。しかし山本大将の最大の目的が敵空母の撃滅ならば、第二次攻撃隊にはあくまで雷装を解かせずに待機させるべきです。仮に空襲の戦果が不十分ならば自らがその圧倒的な火力をもって攻略部隊の露払いをする、それによって機動部隊のミッドウェイ基地航空隊から受ける脅威は矮小化されます。もちろん若干の直掩機を出すことになるでしょうが、それでも艦載機の数では優勢です。また本隊が機動部隊と近接していれば、結果的に敵艦載機の攻撃を分散または吸収する効果も期待できます。空母1、2隻の損失と引き換えに米機動部隊を壊滅させ、尚且つミッドウェイ島を占領できたかもしれません。
そうなると10月に予定されいていたハワイ攻略も現実味を帯びてきますね。しかし、そこまででしょう。オーストラリアを脱落させることはできるかもしれませんがアメリカが音を上げるとは思えず、当面の間潜水艦を駆使して兵站を攪乱し、時間を稼ぐと思います。日本には米本土まで攻め込む兵力はなく、補給も続きません。手詰まりになって戦局が膠着している間に、アメリカはその圧倒的な工業力で海軍を再建して反転攻勢に向かうはずです。
どう転んでも勝てる戦争ではなかった。開戦前からそれがわかっていたのは知識人、政治家はもちろん軍人にさえ少なからずいたにも拘らず止められなかった。恐ろしいことです。歴史は繰り返すといいますが、こればかりは願い下げですね。
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