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最も美しいフィギュアスケーター

近年のフィギュアスケートは選手の低年齢化が進み、それは女子に顕著です。半世紀前にはダブルアクセルさえ容易ではなかったのが今や女子も4回転の時代に入り、もはや成熟した大人の女性には到達しえない高みになってしまったようです。2003年に導入されたISUジャッジングシステムによって採点が細かく数値化され、それまであった芸術点がなくなったことで純粋に技術の高さを競うものに変化したと言えます。スポーツらしくなったといえばそうですが、かつては技術以上にその表現力や芸術性で観衆を魅了した「銀盤の女王」がいました。今回はそんな美しいスケーターたちを選んでみます。


 1 ドロシー・ハミル(米国)        1976年インスブルック五輪金メダリスト
 2 カタリナ・ヴィット(東ドイツ)     1984年サラエボ、88年カルガリー五輪金
 3 タニス・ベルビン(米国)        2006年トリノ五輪アイスダンス銀メダリスト
 4 安藤美姫(日本)            2007,11年世界女王
 5 ジル・トレナリー(米国)        1990年世界女王
 6 タチアナ・ナフカ(ロシア)       2006年トリノ五輪アイスダンス金メダリスト
 7 エリザベータ・トゥクタミシェワ(ロシア)2015年世界女王
 8 アリーナ・ザギトワ(ロシア)      2018年平昌五輪金メダリスト
 9 グレイシー・ゴールド(米国)      2013,15年全米女王
10 ミシェル・クワン(米国)        1998年長野五輪銀メダリスト


ハミルは断トツです。彼女のショートヘアは「ハミルカット」と呼ばれて一世を風靡するほど世界中のアイドルだったのですが、実は彼女のアマチュア時代は記憶にないのです。後に当時の画像を見る機会があり、可憐な少女という印象しか持ちませんでした。その演技を初めて目にしたのは引退からおそらく10年近く経ってからと思います。プロスケーターとしてアイスショーに登場した彼女に釘付けになりました。何たる美貌! 少女時代の可憐さを残しながらも洗練された大人の女性に変貌していたのです。女優に転身しても際立っていたであろう程の美しさは、例えるならオリヴィア・ニュートン=ジョンをややふっくらさせたイメージでしょうか。スケーティングも実に優雅で全く危なげなく見惚れてしまいました。それに演技中でなくとも魅せられてしまう佇まいというか存在感がオーラを放っていて「銀盤の女王」とはこういうものだと体現しているかのようでしたね。観衆の声援も他の選手に比べて明らかに大きく、今だ大変な人気を誇っていることが容易に理解できました。彼女ほど美しいスケーターを後にも先にも知りません。

ヴィットも外せませんね。当時の私はソ連や東欧諸国などの共産主義陣営を敵視していたことと、彼女の自信に満ち溢れて堂々とした氷上での立ち居振る舞いが、それら諸国の傲慢さに通じるものを感じてしまい好意を持っていませんでした。正直なところ「転んでしまえ!」と念じながら見ていたことさえありました。しかし、その演技の素晴らしさは認めざるを得ません。やはり真の女王と言える存在だったでしょう。

鉛筆みたいに細い少女たちが難易度の高いジャンプに挑戦するというアクロバティックな側面が強くなってしまった現在の女子フィギュア界において、トゥクタミシェワの存在は異彩を放っています。大人の魅力を存分に振りまく妖艶な演技は子供には真似できないものですよね。彼女のようなスケーターが淘汰されてしまわないことを願うばかりです。時代の変化には抗えませんが…

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