G-FTB5DFYZ60

ヘッダー

史上最強のスラローマー

3月18日はインゲマル・ステンマルクの誕生日です。各時代に最強と目されたスラローマーは存在しましたが、史上最強と言ったらこの人しかいないでしょうね。W杯86勝は他の追随を許さないものですが、リアルタイムで知っている人間にとって彼の強さは数字以上のものがあります。ノルディックスキーの人気は高いものの、アルペンスキーでは小国にすぎないスウェーデンから彗星のように現れて瞬く間にトップへ登り詰めて3年連続総合優勝、1979年に国際スキー連盟がW杯のポイントシステムを改めたのは、アルペンスキーのメッカであるスイスやオーストリアが彼の総合優勝を阻止するために行ったと、まことしやかに囁かれていました。

スキーに限らず、あらゆるスポーツを俯瞰しても彼ほど時代を完全に支配したアスリートは稀でしょう。初めて総合優勝した76年からの5シーズンで回転45戦24勝、大回転46戦31勝ですからね(五輪・世界選手権含む) 一回目は安全運転で上位につけ、二回目で逆転するパターンが多かったですが、それでいて3秒以上の大差をつけることも珍しくなかったのです。84年サラエボ五輪に出場できなかったのは残念でした。たしかコマーシャル契約が、当時のアマチュア規定に抵触したためと記憶しています。

最も私の印象に残っているのは、88年カルガリー五輪での滑りです。この頃にはマルク・ジラルデリ(ルクセンブルク)やアルベルト・トンバ(イタリア)の台頭もあって全盛期の圧倒的強さはありませんでした。大回転はフィニッシュできず、回転一回目も不本意な滑りで大きく後れを取ります。やはり彼の時代は過去のものなのかと寂しく見つめていた二回目、全盛期を彷彿とさせる会心の滑りで驚異的なタイムを叩き出しました。痺れましたねえ。結果は5位でしたが、優勝したトンバより1秒近く速かったのです。この二回目トンバは一回目トップに立ったフランク・ヴェルンドル(西ドイツ)を捉えるべく猛烈にアタックしていましたから、彼を完全に凌駕した完璧な滑りだったのではないでしょうか。真に偉大な老兵は消え去るのみではないということを実感しました。

トンバも全盛期は非常に強く、新時代の申し子とも言えるパワフルな滑りで席巻しました。相対的に考えれば剛のトンバに対して柔のステンマルクと言うことになるかもしれませんが、ステンマルクの滑りは華麗で優美ながらも素人目にわかるほどの切れ味鋭いシャープさを兼ね備えていました。例えるならアラン・プロストではなくアイルトン・セナだったと。そのステンマルクに比べるとトンバはナイジェル・マンセルあたりかな? 歴史的な評価となると、そのくらいの差があると思うのです。

Ingemar Stenmark – mer ?n bara ?k【電子書籍】[ Ulf Stenberg ]価格:1,943円
(2023/3/17 13:27時点)
感想(0件)