プレミア級RBだったハーシェル・ウォーカー
1785年1月27日、アメリカ初の州立大学としてジョージア大が開学しました。近年のカレッジフットボールを代表する強豪であり昨季まで2年連続での全米チャンピオン、今季も開幕からランキングトップを維持していましたが最終週でアラバマ大に敗れ、3連覇はなりませんでした。ここ数年で急速にのし上がった今が旬と言える大学です。
しかし私にとってはジョージア大と言えばハーシェル・ウォーカーなんですよね。そう、一昨年大きな注目を集めた中間選挙で上院ジョージア州選挙区に共和党から立候補し、決選投票で敗れた人物です。ここでの勝敗が政局を動かすことから日本でも大きく報道され、かつてフットボールのスター選手だったことも紹介されていました。日本では余程のコアなフットボールファンでないと知らないでしょうが、単なるスターではなく超がつくスーパースターだったんですよ。日本のアマチュア球界に例えるなら松井・松坂クラスです。
アメリカンフットボールの花形ポジションがQBであることは昔から変わりませんが、彼の時代にはRBがそれ以上にもてはやされていました。1970年代後半から80年代半ばまでの10年間でRBはハイズマン受賞者の実に9人を占め、NFLドラフト全体1位指名も半数の5人です。スカウトたち垂涎もののグラマーランナーが次々と現れていました。選手寿命の短さを嫌気され、1巡指名さえ稀になった今とは隔世の感があります。
70年代のNFLを代表するスーパースターで映画俳優としても活躍したO・J・シンプソンが選手生活の晩年に差し掛かるにつれ、後継者と目されたのがトニー・ドーセット(ピッツバーグ大)でした。スプリンターかつデイライトランナーである二人のラッシングスタイルが似ていたためです(ウォルター・ペイトンはスモールカレッジ出身で大学時代の注目度は大きく劣ります)彼らの系譜はビリー・シムズ(オクラホマ大)エリック・ディッカーソン(SMU)と受け継がれる一方で、ドーセットのライバルでブルランナーだったリッキー・ベル(USC)のタイプも、アール・キャンベル(テキサス大)ジョージ・ロジャース(サウスカロライラ大)と登場します。この異なるスタイルを併せ持った新時代のプロトタイプとして現れたのがウォーカーだったのです。
185cm100kgのサイズと追い風参考ながら100m10秒10のスピードを兼ね備えた彼は、ドーセットが持っていた1年生のラッシング記録を更新してジョージア大を初の全米王座に導きました。以来在学中の3年間、カレッジフットボール界は彼を中心に回っていたと言っても過言ではありません。そして3年生としてのシーズン終了時には、やはりドーセットのもつ通算ラッシング記録にも823ヤードに迫っていました。ところが彼は驚くべき決断をします。
当時のNFLはアーリーエントリーが認められていませんでした。すでにハイズマン賞を獲得し、大怪我でもしない限り記録更新は確実と誰もが信じる距離を稼いだことで大学での4年目をプレーする意味を失ったと感じた彼は、そこで新興リーグのUSFL入りしたのです。ニュージャージー・ジェネラルズでの3年間で2度ラッシングリーダーになる活躍は額面通りのものでしたが、この選択には首を傾げたものです。(ドーセットファンだった私は正直ホッとしましたが)
アメリカンフットボールは肉体的に非常に過酷ですから、怪我で選手生命を突然断たれる危険があります。自分が市場価値を失う前に大金を稼いでおこうという気持ちは分かりますが、全盛期をUSFLというすでに歴史の中に埋もれたリーグで過ごしたことで、彼の存在が殿堂入りを果たしたドーセットやディッカーソン、キャンベルらに比して希薄なものになってしまったのは確かでしょう。大学でもう一年プレーして84年のドラフトにエントリーしていれば、全体1位指名権を持つニューイングランド・ペイトリオッツは99%彼をピックしたはずです。当時のペイトリオッツは史上最強ガードのジョン・ハナーに率いられた強力なオフェンスラインを誇っていましたから、ディッカーソンとリーディングラッシャーを争って2000ヤードを突破していたかもしれません。3年の回り道がなければ通算獲得10000ヤードを軽く超えて文句なしに殿堂入りしていることでしょう。
記録は破られるものと言いますが、たとえ破られてもそれまでの歴代最高記録として記憶の中に残ります。彼の選択は余人が異論を唱えるべきことではないですが、やはり金を選んだ引き換えとして後世に名を遺す機会を失ったと言えるでしょう。
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