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反則タックル事件と日大の腐敗

2018年5月6日、日本大フェニックスと関西学院大ファイターズのアメリカンフットボール定期戦で信じられないような事件が起きました。関学大オフェンス最初のプレーで、極めて危険で悪質なタックルがQBに対して行われたのです。プレーの映像を初めて見た時の感想は「コイツ、狂ってる…」でした。被害者がアウトオブバウンズに出て、体の力が完全に抜けているところに後方から猛スピードでタックルしている。前方など視界に捉えられる範囲なら身構えることもできますが、全く無防備な状態で激しくタックルされたなら、どんなに鍛えられていても堪ったものではないです。ヘタしたら日常生活に支障をきたすほどの障害を負う危険もあり、これは加害者も十分理解しているはずで、にも拘らずこれほど危険なプレーに走るなどあり得ないことです。東西の横綱と言える両校の対戦ですから気合が入るのは当然ながら普通の精神状態とは考えられず、個人的な恨みでもあるのか或いは薬物か何かでハイになり、所謂「ブッ飛んだ」状態なのではないかと勘繰ったほどです。そのため当初、私の胸中にあったのは加害者に対する強い怒りでした。

しかし事件の背景に日大指導者層の指示があったことが明るみになるにつれ加害者には同情の念が強くなり、怒りはコーチ陣に向けられます。特に内田正人監督の当たり前のプレーと開き直るかのようなコメントが、徐々に誤りを認める姿勢に変化していったことは、世間の批判に晒され心ならずもといった雰囲気を滲ませていると感じて苛立ちました。かつて日大は前任である篠竹幹夫監督のスパルタ教育的指導が功を奏して一時代を築きました。長いアメリカ留学で最先端のコーチング理論を学び、かつ心理学の博士号を持つ「プロフェッサー・ケン」こと武田建さん率いる関学大が圧倒的に強かった1970年代、そのスタイリッシュなフットボールを打ち破ったのは見事でしたが、未だ時代遅れの指導法が蔓延っている事実を証明した形です。

私が最も呆れたのは、被害者の記者会見を受けた日大広報部のコメントです。最初のプレーでQBを潰せというコーチの発言を事実としながらも、これをよく使う言葉であり思い切って当たれという意味だと釈明したのです。何を言っているんだという感じでしたね。守備選手にとってはボールキャリアーをタックルするのが仕事であり、いちいち言われるようなことではないですし、そもそもよく使われる言葉なら加害者が過剰に反応するわけがなくコメントには全く整合性がありません。これが日大の実態か、腐りきっているなと失笑したほどです。

内田監督はこの年就任15年目です。このようなプレーを選手に迫ったのは、おそらく初めてではないでしょう。それまでは結果的に不自然に見えない形でなされたため明るみに出ることがなかっただけと。内田監督は辞任に追い込まれましたが関係者は不起訴処分、日大内部の人事異動や関東学生アメリカンフットボール連盟による処分がなされたことで決着しますが、その後部内の薬物蔓延と大学上層部の隠蔽が明らかになって廃部となります。私は当初、加害者が何か薬物でもやっていたのではという疑念を持ったことを思い出したものです。

アメリカではこの半世紀の間に「ヘルメット・トゥ・ヘルメット」の禁止など選手の健康に配慮して様々なルール改正が行われ、危険なプレーや相手を刺激して報復を招くようなセレブレーションに対して非常に厳しくなりました。日本においてフットボールはマイナーな存在であり、人気スポーツに押し上げるのは至難の業でしょう。そんな中起きたこの事件は、フットボールが非常に危険で野蛮なスポーツなのではないかという印象を世間一般に与えたという意味で大きなマイナスです。日大フットボール部の実績は確固たるものですが、その責任の重さを考えると復活には断固反対です。

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