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ヘッダー

「ザ・ホームラン」

2022年5月30日

1981年シーズン終盤、タイガー・スタジアムでのブルワーズ対タイガース戦を見た時のこと。リック・リーチとカーク・ギブソンが揃って先発出場しました。ギブソンが2番中堅手、リーチは右翼手で8番だったと思います。感無量でした。プロ入りから2年と3年、期待通り順調にメジャーに昇格してタイガー・スタジアムで雄姿を見ることができたのですから。

解説のパンチョ伊東さんも彼らがアメリカンフットボールでも花形選手だったことに触れたうえで、スパーキー・アンダーソン監督の「ギブソンが3番、スティーヴ・ケンプが4番、リーチが5番を打つ時がタイガースがワールドチャンピオンになる時だ」という談話を紹介していました。

試合はブルワーズの先発ムース・ハースに抑え込まれてタイガースは敗れました。二人とも無安打でしたが、揃って中堅後方へあわやという大飛球を放ちました。134mと広いタイガー・スタジアムでなければフェンスを越えていたかもしれない当たりだったと思います。さらに面白いことに、二人とも定位置あたりへの深い飛球で三塁走者を刺すべく本塁へダイレクトの送球を見せたのです。元QBのリーチなら当然でしょうが、ギブソンの肩も大したものだと再発見しました。アンダーソン監督の予言が現実のものとなる可能性に手応えを感じ、今後の活躍に胸を膨らませたのです。

ところがリーチはその後伸び悩んでレギュラーを奪えず、ブルージェイズにトレードされて鳴かず飛ばずのまま引退することになりました。クリーンアップを打つにはパワー不足だったでしょうが、コンタクトヒッターとしてそこそこの数字を残すだろうという私の期待は完全に裏切られる結果に… 

片やギブソンは主軸に成長、勝負強い打撃で84年のワールドシリーズ制覇に大きく貢献します。88年FAでドジャースに移籍、シーズンMVPに選ばれチームもワールドシリーズに進出。その初戦で飛び出したのが「ザ・ホームラン」として有名な代打逆転サヨナラ本塁打です。

両脚を痛め満身創痍の状態で放ったあの一発は何度見ても凄い。デニス・エッカーズリー相手にまともなスイングさえできず、最後スライダーを投げさせるまで粘った精神力の勝利でしょうね。泳がされ気味でバットの上っ面に乗っけた感じの片手打ち、それで広いドジャー・スタジアムのスタンドまで運んだパワーは驚異的です。

彼の打撃はフォームもスイングも非常にコンパクト。スタンスを大きくとって右足はノーステップ。グリップは構えたところから微動だにせず最短距離でボールに向かいますし、フォロースルーも小さい。それでいながらタイガー・スタジアムの3階屋根を越える推定飛距離170m強の超特大本塁打を放ったこともあります。これは純粋に遠くへ飛ばす力が生来備わっていないと無理でしょう。そのくせシーズン最多は29本で、快足を生かして30盗塁を3度クリアーしているものの30-30は達成できず。逆にこういうスタイルなら率を残せそうに思うのですが、3割を超えたのは一回だけ。何か消化不良なんですよね。こんなことなら率を犠牲にしてでも飛ばすスイングに改造していれば50本くらい狙えたのではないかと。勿論凶と出た可能性もありますが…

彼が残した成績から考えて、殿堂入りは今後も無理でしょう。記録より記憶に残る選手の典型だと思います。また、シーズンMVPを受賞していながらオールスター選出経験がないのは史上唯一無二! これも彼らしい何とも言えない事実です。

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Posted by hiro