史上最速のスプリンター
前回の記事で私はフローレンス・グリフィス=ジョイナーの女子100m世界記録は認めていない趣旨を述べました。つまり記録が抹消された男子のベン・ジョンソンと同列に考えているわけです。しかし現世界記録保持者のウサイン・ボルトについては疑念を持っていません。彼の記録に迫るのは至難の業に思えます。カール・ルイスでさえ、互角に渡り合うのは厳しいでしょうね。
ただ時代を遡ると事情は違ってきます。ジム・ハインズが初めて10秒の壁を破ってからルイスが9秒86を記録するまで23年かかったのに対し、そこからボルトの記録までは18年です。これには当然科学に基づいたトレーニング法の浸透や用具の発達が大きいです。さらにハインズより古い世代のスプリンターに比べると圧倒的に有利な条件、サーフェイスの進化があります。
ボブ・ヘイズが金メダルを獲得した1964年東京五輪ではアンツーカーのトラックでしたが、ハインズが9秒95を記録した4年後のメキシコ五輪ではウレタンが採用されています。ハインズの次にシルヴィオ・レオナルドが壁を突破するまで9年を要しているのには、メキシコシティーが高地だったことも一因です。ヘイズのキャリアハイは10秒06ですが、追い風では9秒91も記録しています。もし彼が4年生まれるのが遅かったならハインズの偉業は彼が達成していた、尚且つ驚くべき記録を出していたのではないかと思うのです。
ただボルトの身体能力から考えてヘイズのほうが速かったとは言いませんが、もしボルトがヘイズと同時代を生きていたとしたら、やはり10秒の壁は大きく立ちはだかり破るのは容易ではなかったのではないでしょうか。こと記録の更新に関しては、現代のアスリートのほうが条件面で遥かに恵まれていると考えます。
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