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ヘッダー

アトキンソン&「アサシン」テイタム

私の小学生時代に訪れたブームの当初、最も人気があったのはマイアミ・ドルフィンズだったと思います。スーパーボウル連覇を達成したばかりの強豪であり、ドン・シュラという厳格なヘッドコーチに率いられた優等生の集団というイメージもありました。和を重んじる日本で受け入れられやすいチームカラーに思え、これはNFCのダラス・カウボーイズにも共通するものです。ピッツバーグ・スティーラーズは対極に位置する存在と言えますが、そのスティーラーズさえ善玉に見えるほどダークなイメージを持っていたのがオークランド・レイダースです。

ブラック&シルバーのチームカラーと「侵略者」というチーム名だけでも悪そうに思えますが、名物オーナーだったアル・デイヴィスのリーゼントヘアにサングラスというマフィアかと見紛うばかりの出で立ちが、それに輪をかけていました。NFLと合併する以前のAFLで、ロングパスを投げまくるという他とは一線を画した派手なオフェンスを展開してリーグ屈指の強豪としての地位を確立していました。

ところが、この「侵略者」たち意外と勝負弱く、第2回スーパーボウルに進出するもののグリーンベイ・パッカーズに完敗、その後はドルフィンズとスティーラーズに遮られ続けて「無冠の帝王」と呼ばれることになります。業を煮やしてかデイヴィスは、他チームで戦力外となったり実力ありながら素行の悪さなどで居場所を失った問題児を拾い集め、何時しかチームは選手の「再生工場」となります。とはいえ花形ポジション(オフェンス)は生え抜きのスターが多く、これら「はみ出し者」は守備陣がほとんどでした。1976年に初のスーパーボウル制覇を成し遂げてから83年に3度目を達成するまでに、1,2年煌めくような活躍を見せては人知れず去っていく、そんな選手が守備陣の屋台骨を支えていた気がします。選手の顔写真を見ると、まるで指名手配犯かと思えるような強面が並んでいた記憶もありますね。

そんな一筋縄ではいかない猛者が揃っていた守備陣の中でも、特に悪名高かったのがジョージ・アトキンソンとジャック・テイタムのセイフティーコンビです。強烈でえげつないほどのハードヒットが持ち味で、相手レシーバー陣から忌み嫌われていました。スティーラーズのスターWRリン・スワンは目の敵にされて対戦するたびこっぴどい目に遭っていた印象があります。アトキンソンは今では禁止されている「フック」と呼ばれる相手の首に腕を巻き付けるようなタックルを得意とし、テイタムは「アサシン」と呼ばれていました。このニックネームは伊達でなく、実際にニューイングランド・ペイトリオッツのWRダリル・スティングリーを病院送りにするどころか選手生命を奪い、スティングリーは一生車いすでの生活を余儀なくされるという悲劇に見舞われているのです。当時ヘルメット・トゥ・ヘルメットは合法で普通に行われていましたから、当たり所が悪かったスティングリーが不運だったとしか言いようがないですが、現在なら刑事事件になってもおかしくはないです。

近年では、選手の健康をなるべく損なわないよう配慮したルール改正が重ねられています。時代の流れというか、当然歩むべき道とは思います。それでもアメリカンフットボールが、あらゆるスポーツの中で最も肉体的に過酷であることに変わりはなく、選手が命を削ってプレーしているという面では格闘技そのものでしょう。選手生命が短いのも当然です。そう考えると80年代終わりに近づくまで、とうの昔に人気ナンバーワンのアメリカンスポーツだったにもかかわらず、サラリーの面では野球に大きく劣っていたという事実は信じ難いものがあります。

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Posted by hiro