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ジョー・ロスよ永遠に

2022年5月29日

トニー・ドーセットとリッキー・ベルはともに1977年のジャパンボウルに出場しました。ベルがほぼフル出場したのに対しドーセットはたった2プレーのみで、優等生と悪童の評判を日本のファンに裏付けるかのように対照的でした。しかしその2プレーは強烈で、最初はインに切り込んでショートパスをキャッチすると猛烈なアクセリングでロングゲイン。次はストレートダイブであっという間にスクリメージラインを突破、10数ヤードゲインした後にファンブルというおまけ付きで大物の片鱗を見せつけました。顔見世的なオールスターゲームで怪我をして自分の商品価値を下げる愚を避けたわけですが、そんなビジネスライクな考え方も嫌いじゃなかったです。

しかしこの二人以上に人気を集めたプレーヤーがいました。カリフォルニア大のQBジョー・ロスです。彼はジュニアカレッジから転校後すぐオールアメリカンに選ばれる活躍を見せ、その年ドラフト全体1位で指名された大学の先輩スティーヴ・バートカウスキに劣らぬ逸材という高評価を受け、翌年のハイズマン賞有力候補とみなされていました。ところがその76年シーズン彼は大きくパフォーマンスを落としてしまいます。実はメラノーマという皮膚がんの一種に侵されていたのです。ハンサムなスターQBを襲った悲劇は来日時すでに日本のファンにも知れ渡っていたのでそのプレーぶりが注目されていました。93kgあった体重も80kgに減り、明らかにコンディションは悪かった。私の記憶にあるのはたった一回のパス、しかしそれは針の穴を通す正確さで矢のようにレシーバーの胸に突き刺さったのを覚えています

それから一が月ほど経ったある朝、新聞をめくると目に飛び込んできたのが彼の訃報でした。愕然とし、涙が溢れてきました。たった一か月前です。あの時彼はまさに尽きかける命の炎を懸命に燃やしていたんだと…
大手新聞の2面にかなり大きなスペースを割いてアメリカの、しかも一大学プレーヤーの訃報が載るなど異例のことです。それほど彼は日本でも注目され話題をさらっていたのです。直後の『タッチダウン』誌は当然彼の哀悼号になり、多くのメッセージが寄せられていましたね。その名はジャパンボウルMVPに与えられる「ジョー・ロス・メモリアル賞」として残ることになります。

強肩とクイックリリース、サイズや知性、リーダーシップにも恵まれ最もプロ向きのQBと評された彼がもし健康を保っていたら、どれほど活躍できたか想像せずにはいられません。次回はそれを考察してみたいと思います

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Posted by hiro