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「TD」と「スウィートネス」

2022年5月22日

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トニー・ドーセットは1954年4月7日生まれ、ウォルター・ペイトンは同年7月25日生まれとドーセットの方が早いにも拘らず、プロ入りは2年遅い。アメリカの教育プロブラムは州ごと違う上、レッドシャツ(1年プレーせずに5年目のプレー資格を得る)制度があるために珍しいことではないですが、ドーセットはレッドシャツの経験はありません。となると何らかの理由で留年あるいは休学した可能性が出てきます。アメリカの場合新学期は9月ですから、53年9月から54年8月に生まれた選手を調べると、大半が76年のドラフトで指名されていることがわかります。そこでもし二人がこの年に指名されることになっていたらについて考察してみます。当然この学期外に生まれた選手は除外することになります。

前提としてドーセットはプロ入りが1年早まることになるので、ハイズマン賞を獲っていない。つまり市場価値は実際よりも低くなるでしょうし、逆にペイトンは1年遅れる分高まっていたと思われます。またこの年全体1,2位で指名されたリーロイ・セルモン、スティーヴ・ニーハウス共に54年9月以降の生まれですから、ここでは指名されないことになります。

さて全体1位指名候補としては二人の他にカリフォルニア大のRBチャック・マンシー、守備陣ではマイアミ大のDTエディー・エドワーズとノートルダム大のDEロス・ブラウナーでしょう。指名は共にエクスパンションチームのタンパベイ・バッカニアーズ、シアトル・シーホークスの順。悩ましいところです。

バッカニアーズのヘッドコーチであるジョン・マッケイは史実ではセルモンを指名したのですが、これは翌ドラフトで教え子のRBリッキー・ベルを指名するためにマンシーを回避したなどと噂されました。私はそうでなくセルモンがトッププロスペクトだったからと考えています。ここはペイトンでしょう。彼はジャクソン州立大というスモールカレッジにありながらオールアメリカンに選ばれていますし、75年ドラフト1巡4位指名です。そこから更に評価を上げたとするならサプライズとは思いません。

シーホークスはどうか。ヘッドコーチのジャック・パテラはディフェンス畑で、大方マンシーの予想を覆してニーハウスを指名しています。ブラウナーよりはエドワーズでしょう。

次のニューオーリンズ・セインツがマンシーかドーセットのどちらかということになりますが、当時のセインツは攻撃ラインが弱体なので、よりサイズとパワーがあるマンシーを選んだのではないかと。結果、ドーセットはサンディエゴ・チャージャーズということになるというわけです。

その後二人はどのような道を歩むのか。ペイトンは苦しむでしょうねえ、穴だらけの攻撃ラインでは… まさに孤軍奮闘という形になるでしょうが、問題は翌ドラフトでも全体1位指名権を持っていたとして、ペイトンがいながらベルを獲るかどうかです。ただ同年度生まれであるセルモンのエントリーもこの年にスライドすることになるので難しいところです。私ならセルモンですが、さあマッケイどうするか?
何れにせよ最初の2,3年は1000ヤードに届かず、生涯獲得ヤードは大きく減少したはずです。因みにベルの初年度は平均獲得2.9ヤードという惨憺たるものでした。

もしベルを指名したとしても、彼をFBとして起用する手もありますね。これは非常に強力なペアになりますが、あくまでベルをチームの核としてチーム作りをするならば、ペイトンを放出することもあり得ます。過去の記事で述べたようにベルは病気で若い命を散らせてしまうので、バッカニアーズは余りにも採算が合わない選択をすることになります。

トレードが進行するのは77年か78年のオフになるでしょう。この場合セルモンはいないわけですから、守備陣のリーダーを求める可能性大ですね。この時期チームを離れた大物守備ラインにはシンシナティ・ベンガルズのコイ・ベイコン、デンバー・ブロンコスのライル・アルゼイド、シカゴ・ベアーズのウォーリー・チェインバースがいて、何れも核となるRBを欲しているチームですから有力候補でしょう。どこに移ったにせよ、その後の飛躍は間違いないと思います。

一方のドーセットはいきなりブレークするでしょうね。この時期のチャージャーズは再建途上とはいえ攻撃ラインはまずまずですが、QBダン・ファウツはまだ鳴かず飛ばずで、カウボーイズのような「バランスアタック」は望めません。裏を返すとドーセットの走力に頼るしかなく、彼中心のゲームプランで臨むでしょう。実際と同じく新人王を獲得、1000ヤードは軽く突破したでしょうね。78年ドン・コリエルのヘッドコーチ就任後ファウツが覚醒して「エア・コリエル」と呼ばれるNFL屈指の攻撃力を発揮することになるので、ドーセットはその中心として縦横無尽に活躍したはずです。チャージャーズのスーパーボウル制覇も大いにあり得たと思うのです。

結論として、生涯獲得ヤードはドーセットがペイトンを上回ったと考えます。勿論多少の依怙贔屓はありますが(笑)

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Posted by hiro