中国恐るべし
ウィリアム・ウォレスは生きながら解体されるという残虐な方法で処刑されました。これは中国における凌遅刑に近いものです。映画『ブレイブハート』でも、さすがに詳細な描写はできずに様々な刑具をワンカットで映すことによって示唆するに止まっています。最後にはその凄惨さに見物人から慈悲を求める声が上がりますが、実際にはなかったでしょうね。
今でこそ世界的な潮流として死刑廃止に向かっていますが、人類が人道的な処刑方法を模索するようになるのは近代に入ってからです。それ以前は洋の東西を問わず刑罰は見せしめの意味合いが強く、犯した罪の大きさに相応しい苦痛を与えて結果的に死に至らしめるわけです。ウォレスの罪状は大逆罪ですから、ロンドン市民が彼に同情するいわれはありません。
庶民の感覚も現代とはかけ離れているはずです。ロンドン塔をはじめ罪人の首や胴体が晒されたまま野鳥に啄ばまれる光景が常態化していた中世ですし、大罪を犯した受刑者の場合殆どが公開処刑です。また戦争になれば残虐行為は引きも切らないわけですから、戦争においてすら人道に背く行為を非難する私たちとは価値観が全く違うでしょう。つまり残虐行為に免疫ができている庶民にとって公開処刑は娯楽の一部でしかなかったと思うのです。執行人の手際が悪すぎて見物人が怒り、暴動になったという記録があるほどです。
比較すると日本の刑罰が最も「人道的」だった気がします。少なくとも生きながら解体することはなかったですし、苦痛を引き延ばすことを良しとしなかった節が見受けられます。切腹に介錯人を立てるなどは典型的です。大規模な宗教戦争を経験しなかったことに一因があるかもしれませんが、それは中国も同じですからねえ… 中国の歴代王朝に共通するのは敵対勢力をとことん根絶やしにしてきたことです。処刑された要人の数はヨーロッパの比ではないです。見事なまでの徹底ぶりで、怖い所というより怖い人たちと言うべきかもしれません。
それにしても凌遅刑が20世紀初頭まで行われていたのには驚きますよね。長い歴史の中で培われた民族性なのでしょうか? 歴史上他国への侵略行為で一般庶民を大量虐殺するのは古今東西共通事項で、ある意味つきものだったと言えますが、自国民を大量に粛清するというのは毛沢東時代の中国とスターリン時代のソ連が双璧でしょう。プーチンのロシアが暴挙に出るのを見るに及んで露骨に自由主義陣営への挑戦を続ける中国の出方が気になります。尼港事件や通化事件での残虐行為といい、両国には思想や政治体制云々でない共通する恐ろしさがあるように思えます。杞憂に終わることを切に願うのみです。
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