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ウィリアム・ウォレス

1305年8月23日、スコットランドの英雄ウィリアム・ウォレスが刑死しました。彼の名は1995年の映画『ブレイブハート』で一躍世界に知られることになりましたね。アカデミー賞5部門を制したこの作品は、今日まで繋がるスコットランド独立機運の高まりを助長したとも言われ、社会的に大きな影響を及ぼしたことでも意義深いです。

中世の人物が主人公である以上その人物像や事績についての明確な資料は限られ、だからこそ創作が入り込む余地が大きいのは当然ですが、余りに史実とかけ離れてしまうとフィクションそのものになってしまいます。この作品は絶妙なところで上手にバランスをとった秀作だと思います。

特にウォレスとイザベラのロマンスなどは荒唐無稽と言ってもいいほどの作り話ですが、クライマックスでイザベラが宿した子がウォレスの種であること、死の床に就いていたエドワード1世がその事実を彼女に耳打ちされて驚愕し引導を渡されたこと、結果的にウォレスの血がイングランド王室に受け継がれたことを示唆するに至って物語の結末に決定的な役割を果たしており、非常に秀逸な脚本だと考えます。

また戦闘シーンの迫力も特筆すべきものがあります。身体パーツが血飛沫とともに乱れ飛ぶ、かなり過激な描写ですが、力と力がぶつかり合って体力無き者は生き残れないという過酷な戦場の実態が描かれています。きっと中世の戦場はこんな感じだろうと思わせるリアルさです。

個人的にはエンディングが最も好きですね。イングランドの大軍と対峙する中、結局話し合いで片が付き、戦いにはならないと冷めた姿勢でいる有力貴族たち。しかし、かつて(作品中で)ウォレスを裏切ったロバート・ブルースは彼の遺志を継ぐべく決戦を挑んで独立を勝ち取ります。ロバート・ブルースは明晰ながらも弱さを併せ持った人物として描かれており、最後の最後まで逡巡する彼の姿にそれが垣間見えますね。実際の彼はそんな軟な人物とは思えませんが… このバノックバーンの戦いでスコットランドが独立を果たしたのは事実ですが、それも長くは続かずイングランドに併合されることになります。

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感想(1件)

中世

Posted by hiro