天才と秀才の違い
ホイットニー・ヒューストンの才能が、神から授かった特別なものだったことに疑問の余地はないでしょう。具体的に何が凄かったか。まず圧倒的な声量ですね。数多いる歌姫たちで太刀打ちできる人は、ちょっと思い当たりません。マライア・キャリーあたりでは、かき消されてしまうでしょう。
しかし私がそれ以上に素晴らしいと感じるのは声質なんですよね。声量だけで言えば、例えばジェニファー・ハドソンなら勝負になるかもしれませんが、彼女の声はピーキーで耳に障るんですよ。心地よくは感じない。ホイットニーの場合は線が太くマイルドかつウェッティーで、非常に深みがある。この声質こそ、神から贈られた才能の中でも最大の強みであり、彼女を稀有の存在足らしめたと思うのです。
また歌唱力の高さは誰もが認めるところですが、とくに私の印象に残っているのがデイヴィッド・フォスターのインタビューです。ABCだったかCNNだったか忘れましたが、彼女の訃報からいくばくもなく放送されたニュース番組で追悼コーナーが組まれ、フォスターが彼女の才能がいかに特別だったかを述懐していたのです。その中で発した言葉が、
「例えばセリーヌ・ディオン。彼女は100%僕が望むとおりに歌ってくれる。これも凄い。でもね、ホイットニーの場合、90%は僕が望むものより良いんだ」
というものでした。まさに的を得たというか、天才と秀才の違いを如実に表しているなあと感心したものです。数々の大物アーティストをプロデュースしたフォスターの感想ですから重みがありますよね。勿論どちらが上とかいう問題でないのは言うまでもないですが、ホイットニーの才能が他と一線を画するものであったことが伺えます。また彼が比較対象として唯一名を挙げたという事実は、セリーヌの才能も類稀なものであるという証明でしょう。
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