誰にでも愛される国民的アイドル
1月17日は山口百恵さんの誕生日です。デビュー当時は花の中三トリオの一角でしたが、今ではアイドルの枠にとどまらない伝説の存在ですね。純朴な容姿の少女がきわどい歌詞を歌うという異例な売り出し方で、当時小学生の私は聴くたびにドキドキしていたのを覚えています。そのため親世代には快く思われていなかったかもしれませんが、この「青い性路線」が彼女のアイデンティティーを揺るぎないものにしたのは確かでしょう。当時お茶の間のアイドルといえばキャンディーズでしたが、彼女たちとは全く異質の存在だったのです。
実際、歌唱力は当時のアイドルでは抜きん出ていましたし、女優としても高い評価を得るようになります。キャンディーズを押し出すように登場したピンクレディーの人気は瞬間風速的には凄まじいものがあり、それも男女問わないものでした。クラスの女子たちは全員真似して踊ってましたね(職場の同僚は「今でも踊れるわよ」と言ってます)ただ露出が多い衣装に母親たちは眉をひそめていたきらいはあります。そのころには百恵さんはアイドルの域を超えた国民的人気を誇っていました。つまり別格だったのです。
しかし彼女を伝説の存在足らしめているのは引退後の態度でしょう。結婚して引退しても、いつの間にか芸能活動を再開していたり、本格的な復帰でなくともメディアに登場するパターンが大多数です。つまり「昔の名前」で売るのは容易なことであり、ましてや彼女の場合はトップ・オブ・トップでしたから復帰を望む声も多かったはずです。ところが復帰するどころかマスコミとの接触すら頑なに拒み続ける潔さ、これこそ彼女の伝説に神秘性を加えて増幅しているのでしょう。アイドル歌手に否定的だった私の母も「あの人だけは偉い!」と常々言っています。もしかしたら引退後初めて名実ともに誰からも愛され憧憬される存在になったのかもしれません。
アイドル歌手の王道路線は入れ替わるように登場した松田聖子さんによって完成されたと思います。所謂「ぶりっ子」で、これ以降の女性アイドルはほぼこの路線を踏襲しており、百恵さんの後継者は存在しませんでしたが、遅れてデビューした中森明菜さんこそがそうだったでしょう。
二人には共通点が多いですよね。声質はハスキーとは言えないまでもマイルドで中低音が豊か、かつパンチがある。歌唱力は抜群ですし、年齢より大人びて見えます。歌う楽曲もアイドルらしからぬ「不良性」を感じさせますしね。ただ、聖子さんの「ぶりっ子」ぶりに対してアンチも多かったのと同様、明菜さんにもその「不良性」ゆえアンチが多かった。対して百恵さんにはアンチが少なかったのは何故か? 私には明菜さんの持つ「不良性」はもしかしたら地かもしれないと思わせる何かがあったような気がするのです。立ち居振る舞いや受け答えからの印象かもしれません。もちろんイメージに合わせる演出の可能性もありますが。百恵さんの「不良性」はあくまで楽曲の中でのものであり、歌い終われば普通の純朴な少女に戻ってしまう。つまり演技であることが手に取るようにわかり、作中の少女とは全く別人格だと納得できる。そのあたりの違いではないかという気がします。
とにかく百恵さんの存在自体がアイドル全盛時代の金字塔であり、今でも唯一無二だと考えています。
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