ビルの思い出
今回の夢では懐かしい人が現れました。初出演です。
ビルが怪訝な顔をしている。どうかしたのかと聞くと困った顔をした。どうやら上手く日本語で表現できないようだ。普段極力日本語でコミュニケーションを取ろうと努力しているのが分かるが今回はどうにもならないようで、しばらく悩んだ挙句英語で話し始めた。しかし私のヒアリングに問題があるらしく、よく聞き取れない。そこでゆっくり話すよう促し何度か聞き返した。するとどうやら、
「日本ではチャイナドレスを着てイタリアンレストランに入ることを変に思わないのか?」
ということらしい。そこで、確かに場違いに思えるが中華街のスタッフかもしれないし、近くにコスプレのクラブがあるのかもしれない。どっちにしろ本人は気にしてないだろうという趣旨の発言を伝えたが、これまた私の英語力不足で理解してもらうのに時間がかかった。悪戦苦闘の後、彼はようやく腑に落ちた顔をした。
という内容です。このビルは初老のドイツ系アメリカ人で、もう30年近く前ですが米軍の根岸ベースで職員として働いていた人物です。夢での設定と違って日本語は全く話せませんでした。俳優ジャック・ウォーデンが口髭を蓄えたような風貌で、山手の自宅で家計の足しにと英会話を教えており、当時のガールフレンドに誘われたのがきっかけで通うようになりました。教室とはいってもサークルみたいなもので自由参加であり、メンバーが各自千円ずつ払えば良いというシステムで気軽なものでした。それでもネイティブの英語に直接触れる機会として貴重でしたね。メンバーが女の子ばかりだったことも大きかったですが。
ビルには奥さんがいて、お茶を運んでくれがてら挨拶だけは交わすのですが、早々に引っ込んでしまうのです。何だかいつも目が笑っていないような感じで女の子たちはちょっと怖がってましたね。「きっと奥さん私らのこと良く思ってないよ」などど囁き合っていたものです。美人の部類に入ると思うのですが気が強そうで、ちょうど映画『メジャーリーグ』に登場する女性オーナーに似てましたね。
最も得難い経験は、根岸ベース内に入れたことでしょう。当時根岸ベースでは年に数日一般に開放する日を設けていました。とはいえ軍の施設ですから誰でも入れるわけはなく、身元を保証する軍人や職員が帯同せねばならなかったのです。子供のころには無断で立ち入ると撃たれると真剣に考えていた施設内に入れたことに感慨はひとしおでしたね。また、背面からしか見ることができなくなっていた旧根岸馬見場の観覧席を正面から見ることができたのも忘れられない思い出です。また瑞穂埠頭の「ノース・ドック」でのバーベキューに連れて行ってもらったこともあります(有名なバー・スターダストの先です) 米軍仕込みのバーベキューは肉も豪快、焼き方も豪快で美味しかったなあ。赤身が好きでステーキに嚙み応えを求める私には、どストライクでした。
そんな楽しい教室にも終わりの日がやってきます。ビルが西ドイツに転勤することになったのです。まだ冷戦終結前でしたから対ワルシャワ条約機構軍との最前線に当たるとはいえ、自身のルーツである西ドイツに行くというのは満更でもなかったようです。程なくベルリンの壁が崩壊するなどとは誰も想像できないことでしたが、そうなったからには戦争に巻き込まれはしなかったでしょう。健在ならばかなりの高齢ですが、退職して帰国しているでしょうね。貴重な経験をさせてもらった出会いに感謝するばかりです。
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