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真夏の長袖

今回の夢にもかつての同僚が登場しました。それも学生時代のアルバイトです。その同僚に私が髭の剃り方を指南するというものです。彼は髭が薄いほうだった記憶があるので、それが材料になった感じです。

実際彼は短い付き合いだったとはいえ、かなり強い印象を残した男で、夢にも何回か登場してきました。まず気になったのが左手でいつもグーを握ってるんです。決して開いて見せることがない。最初は野口英世博士のような障害かと思っていたくらいです。その後気付いたのが真夏になっても長袖で、しかも白は着ないのです。不審に思いつつも単刀直入に聞くことができずにいました。

職場には彼を中学時代から知る同僚もいて、彼らと馬が合った私は三人で飲みに行くこともしばしばありました。ある時たまたま彼が不在だった飲み会の折、その同僚に常々疑問を感じていたことを打ち明けてみたのです。答えはこうでした。

彼は中学時代から極め付きのワルで、彼らの地元界隈では知らないものがいないくらいだったと。とにかく喧嘩が強くて負けたことが一度もなく、在学中から複数の暴力団にスカウトされた結果、ある組織の組長宅に住み込みから修業を始めて将来の幹部候補つまりエリートコースを順調に歩んでいたそうです。ところが子分だか舎弟分だかが下手を打ってしまったために、足を洗わざるを得なくなったんだと… グーを開かないのはその際落とし前として詰めた小指を見せたくないため、長袖しか着ないのは全身に入った登り龍の紋々を隠すためだったわけです。

訳ありだなと想像していたもののビックリしました。全然そんな風に見えないんですよ。長身ですがヒョロっとしていて格闘家みたいな体格ではない。顔つきこそ精悍でしたがいつもヘラヘラしていて冗談ばかり言っていましたし、こっちが突っ込み入れても声を荒げることさえ全くなかったですから… その同僚の言うには「昔の事だし何を言っても俺たちに本気で向かってくることはないから心配はない。ただ、もし誰かにキレる場面に出くわしたら止めたりしないほうがいいよ。止められないし、とばっちり食らったら損だから」とのことでした。その同僚も相当ヤンチャだったようで、その片鱗を何度か見たことがありますが、こと喧嘩については比較にならないほどのレベルだったようです。

以来私は真夏でも半袖を着ない人間に出会うと、彼を必ず思いだします。そうと決めつけるわけではなく、ひょっとしたらそうかも知れないという程度ですが刺激しないようには意識しますね。隠すということは自分の過去に対して負い目があるという証に他なりませんから。

人は見かけによらないとは昔から言われることです。私が若い頃はワルかどうかは凡そ見かけで判断できたので、だからこそ通用したのかもしれません。今はさっぱり分りませんよね。真面目な人間が過ごしやすい時代になったのかそうでないのか? 不可解な事件が起きるたびにそんなことを考えます。少なくとも日常どこにでも危険が潜んでいることを忘れるべきではないですね。

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Posted by hiro