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まさに珠玉、美の回廊

1793年8月10日、ルーヴル美術館が開館しました。世界で最も著名かつ最大級であるこの美術館については、日本のメディアでも様々なかたちで取り上げられてきました。その全容や収蔵品を紹介する番組も他の美術館に比べて圧倒的に多く、日本人にとって非常に身近な存在です。

そんな特集の中で、私の印象に強く残っているのがNHKで放送された日仏共同制作『ルーブル 美の回廊』です。おそらく1980年代だったと思いますが、定かな記憶ではありません。ただナレーションを担当した現渡邊あゆみアナウンサーが、まだ黒田あゆみ名義だったことから少なくとも30年は下るはずです。先史時代から近代にいたる膨大なコレクションの中から厳選した珠玉の逸品を全7回にわたって紹介したもので、全てVHSに録画して何度も見返したものです。

何が素晴らしかったかというと、静謐かつ厳かな映像で余計な解説は一切排し、作品の解釈は視聴者の感性に委ねるというコンセプトです。民放でよく見られますが、タレントを起用して館内を巡らせたり、専門家を登場させて解説をさせたりという場面は皆無です。こういった手法も入門者向けにはそれなりの意味があるとは思いますが、どうしても押し付けがましくなるんですよね。こと美術品に関しては、先入観や固定観念は真髄を理解しようとするうえでの妨げになります。定説とは正反対の感想を持ったとしても、それこそが個であり自我であるわけですから何ら悪いことではないのです。

さらにカメラワークも秀逸です。暗闇の中に作品を光で浮かび上がらせてから徐々にクローズアップしていく手法が頻繫に用いられ、これが神秘性と荘厳さを増幅しています。エンリオ・モリコーネの音楽もいいですし、さらには黒田アナの穏やかで落ち着いたナレーションが格調の高さを醸し出しています。やはりこういった番組には、しっとりと艶っぽい声音でないとハマらないですね。ことナレーションにおいては、NHKのアナウンサーが民放の追随を許さないのは今も昔も変わりません。

個人的には同じコンセプトで新作を放映してほしいです。それもルーヴルに限らず世界の美術館・博物館をシリーズで。大英・ウフィツィ・プラド・オルセー・エルミタージュ・エジプト・東京・故宮あたりは外せないですね。ナレーションは毎回NHKのエース級女子アナに惜しみなく交代で担当させて。桑子真帆アナ・和久田麻由子アナ・林田理沙アナには是非登場してもらいたいです。そうそう、山本志保アナの声も好きだったなあ…どういった組み合わせになるかも楽しみになること請け合いで、民放には真似できないNHKならではのシリーズを実現してもらいたいものです。

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芸術

Posted by hiro