存在感希薄な州の存在感
1787年12月7日、デラウェア州がアメリカ合衆国憲法を批准しました。これは建国に関わった13植民地のトップを切ったもので「ファーストステイト」とも呼ばれる所以です。しかし日本における知名度は極めて低いですよね。近年ではジョー・バイデン前大統領がデラウェア州選出上院議員だったことが報道されたくらいでしょうか。面積では50州中2番目に小さく、北部はフィラデルフィア都市圏に含まれており、日本で知られるほどの大都市は存在しません。州都はドーバーですが、空軍基地とレースファンならばオーバルトラックがあることを知っている程度でしょう。著名な大学にデラウェア大がありますが、スポーツプログラムは振るわず出身アスリートも極めて少ないです。フットボール通の私でも、リッチ・ギャノンとジョー・フラッコくらいしか名が浮かびません。
日本でデラウェアと言えばブドウの品種を連想しますが、これはオハイオ州のデラウェアに因んだものであり、デラウェア州とは無関係です。
このように影が薄いデラウェア州ですが、異彩を放っているのが会社法なんですよね。所謂タックス・ヘイヴンなのですが、州の人口よりも法人数のほうが多く、全米上場企業の過半数が登記上の本社を構えているという異常さです。州ごとに法律が違う合衆国においては、これも自治体経営戦略の一つではありますが如何なものでしょう。タックスヘイヴンは世界中に存在しますが、OECD(経済協力開発機構)の掲げる「タックス・ヘイヴン対策税制」の導入をアメリカも表明しています。それでも連邦制をとり州の権限が非常に強いアメリカでは、大統領でさえ法改正を強制できないのです。自由を標榜する国家としては、ある意味その理念に適っていると言えなくもないですが、過度の自主性を認めるのは疑問です。「タックス・ヘイヴン」は世界中に存在しますが合法的な脱税に他ならないのみならず資金洗浄の温床になっている実態もあり、恩恵に与っているのは富裕層のみでしょう。根絶を叫んでも掛け声だけで事実上不可能なのは、資本主義社会がごく一部の特権階層に支配される格差社会であるという現実を思い知らされます。自由と平等が完全に両立することは有り得ず、その達成を目指したかつてのコミュニストたちが理想とした共産主義社会も、内実は全体主義以外の何物でもなく全くの夢物語に終わりました。真の平等などは人間がエゴを完全に捨て去ることができない限り実現不可能である以上、自由があるだけ遥かにマシです。そういった意味で東西冷戦に西側が勝利したのは当然の帰結だったはずですが、近年の国際情勢を鑑みると大きな不安に襲われます。地球が消滅する前に人類が自らの手で破滅への道を歩む可能性が、加速度的に高くなっている気がします。
私は「ユートピア」なる理想郷が実現可能とは思いませんが、少しでもそこに近づけるためには自由を前提とした資本主義社会を公平なものに進化させていくしかないでしょう。そのため自由の国アメリカにおいて、格差を助長するデラウェア州の会社法を撤廃する日が訪れるかどうかが大きな試金石になると考えています。このところグローバリゼーションに逆らう方向に歩み始めたアメリカが、国際協調に転じて指導力を発揮するならば有り得なくはないでしょう。ただし大企業と富裕層を優遇する共和党政権の間は無理でしょうね。そもそもすでに人類は将来必ず訪れる地球の滅亡に備えて一致団結しなければならない時期にあり、戦争などしている場合ではないのです。行き過ぎた「アメリカ・ファースト」と気候変動を否定するトランプ政権の姿勢が、将来的に大きな時間のロスを招くのではと危惧します。個人的には揺れ戻しは必ずあり、アメリカは正しい道に回帰してくれるものと信じています。
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