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歴代最高大河『武田信玄』

2月15日は新田次郎さんの命日です。山岳小説のパイオニアとして知られ気象学者でもあった新田さんですが、私にとっては何と言っても『武田信玄』なんですよね。こういった時代小説においても気象や山岳に関する造詣の深さは遺憾なく発揮されています。

小説を読んだきっかけは1988年のNHK大河ドラマ『武田信玄』の影響です。素晴らしい映像作品に出会って原作を読みたくなることは少なくないですが、『ゴッドファーザー』や『徳川家康』と並ぶ代表的なものです。

正直なところ、最初はキャスティングに違和感を感じていました。今では一般的となっている高野山持明院蔵の肖像画は当時あまり知られておらず、信玄といえばでっぷり太った如何にも豪傑という風貌と思われていましたからね。確かに死因が労咳とされていたことを考えると太っているのは不自然で、そのあたりが考慮されたかどうかはわかりませんが、中井貴一さんが信玄のイメージとはかけ離れていたのは事実です。先見の明があったということでしょうか。

上杉謙信を演じた柴田恭兵さんも?という感じでしたが、すぐに違和感はなくなりましたね。原作の謙信よりも激情家の印象ですが、「青白き天才」に相応しかったと思います。また平幹二郎さんのエキセントリックな武田信虎も凄かった。鬼気迫るものがありました。

いちばん楽しみだったのは、杉良太郎さんの北条氏康です。私が最も好きな戦国武将であり、信玄・謙信としのぎを削った名称であるにもかかわらず知名度で遠く及ばない氏康は映像作品では端役にすぎず、人となりが描かれることは皆無に等しかったのです。杉さんほどの大物を充てたからには重要な役どころであることは間違いなく、大いに期待しました。素晴らしかったですね。貫禄ありありでした。知将で内政・外交に長け、冷静沈着ながら機を見るに敏、果断でいざ合戦となれば敵に後ろを見せない勇将という氏康を見事に体現していました。登場を待ちわびながら見ていたものです。

個人的には歴代大河ドラマの中で、印象に残るシーンが突出して多いんですよね。挙げたらきりがないのですが
・上田原出陣前の軍議
・菅原文太さん(板垣信方)の上田原での討死
・信方らの討死で茫然自失になった兄晴信(信玄)に代わる、若松武さん(武田信繫)の下知
・上田原での敗戦後、若尾文子さん(大井夫人)の晴信への苦言
・善得寺の会盟
・雷鳴に怯えて覚醒する信虎
・久しぶりに対面した信虎と信繫の目力での対峙
・大井夫人の遺言と看取る三兄弟
・堤真一さん(武田義信)の最期
・夫義信の死で駿河に送り返される古村比呂さん(於津禰)の逆上
と、信玄周辺だけでもこれだけパッと思い浮かびます。枚挙に暇がないほどです。

それから、信繫役の若松さんはこれが初見でした。原作で晴信と信繫は瓜二つということになっており、中井さんとは似ても似つかないのに加えてちょっとみすぼらしい感じがしてイマイチだなと思ったのですが、回が進むにつれ存在感を増して兄に劣らない器であった信繫を見事に演じてくれました。前述した信虎の突き刺すような凝視を、額が触れんばかりの距離で必死に受け止めながら決して逸らさない火花が散るかのような対面は、非常に緊張感があって好きですね。なんとなくですが、最後に信虎が信繫のおでこをチョンと突くのは平さんのアドリブだったのではと想像したりします。

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Posted by hiro