God for Henry, England and St.George
ヘンリー5世というと、ローレンス・オリヴィエーが監督主演した映画『ヘンリィ五世』を思い出します。このブログでも、先日私の好きな洋画ランキングで20位に入りました。古典的な様式美に溢れ、まるで舞台の場面を切り取って繋ぎ合わせたかのような構成が印象的な佳作です。オリヴィエーは誰もが認めるイギリスを代表する名優で、まさに当たり役と言える存在感を見せています。
私が特に好きなのが、攻城に失敗して撤退し意気消沈している兵士たちの前にヘンリーが現れ、馬上から鼓舞するシーンです。静かな語り口で戦場において男はどうあるべきかを説き始め、弁舌が次第に熱を帯びていくにつれて兵士たちがその虜になっていくのが手に取るように伝わってきます。最後に「God for Henry, England and St.George!」とヘンリーが叫んで馬を返すと、兵士たちは憑かれたように彼の後を追って戦場に戻っていく… さすがはシェイクスピア俳優の面目躍如と言うべき台詞回しは見事の一言に尽きます。また彼の声が素晴らしいんですよね。うっとり聞き惚れてしまうほどです。
映画はヘンリーがフランス王女キャサリン・オブ・ヴァロワと結婚してフランスの王位継承権を手にするところで終わり、その後彼が志半ばで病に斃れることには全く触れません。これはナチスドイツとの戦争真っ只中という時代背景が影響したのでしょう。戦意高揚のプロパガンダ色があることは否定できないと思います。
ケネス・ブラナーも『ヘンリー五世』を監督主演していますが全く違った趣で、よりソリッドで華美な演出を排した仕上がりです。ちょうどジャンヌ・ダルクに置き換えるとイングリッド・バーグマン主演の『ジャンヌ・ダーク』がオリヴィエー版で、サンドリーヌ・ボネール主演の『ジャンヌ』がブラナー版のコンセプトに当たると思いますが、ことヘンリーに限って言えばやはりそのカリスマ性を十二分に感じさせるオリヴィエーに軍配を上げます。
ヘンリー五世 万人に愛された王か、冷酷な侵略者か (世界歴史叢書) [ 石原 孝哉 ]価格:4,180円 (2022/5/30 13:57時点) 感想(0件) |
ディスカッション
コメント一覧
まだ、コメントがありません