生まれ故郷で最後の輝き
1989年シーズンF1専門情報誌『GPX』では、ある企画が催されていました。レース毎違うお題で結果を読者が予想し、最も的を得た回答を誌上で発表するというものです。フェニックスでのアメリカGPのお題は
「地元フェニックス出身のエディー・チーヴァーは何位?」だったので、私は迷わずペンを取りました。内容はうろ覚えですが、
今年のチーヴァーはお世辞にも調子が良いとは言えない。狭すぎるコックピットに苦しめられ、グリッド後方からのスタートを余儀なくされている。
フェニックスは暑く、マシンにもドライバーにも厳しいのでサバイバルレースになる。得意の市街地コースで、ましてや生まれ故郷での初開催。奮起しないはずがない。
また、彼はやはり初開催だった82年のデトロイトで2位に食い込んでいる。歴史は繰り返すという。久々に彼の激走が見られるだろう。
結果、彼はセナかプロストどちらかの次に2位でフィニッシュする。以下ブーツェン、パーマー、カフィ、ナニーニと続く。
というものでした。ここまでのパフォーマンスを見ていて、正直ダメもとと思っていたのは確かです。
レースが始まってみると17番スタートから着実に順位を上げ、2位のウィリアムズを駆るリカルド・パトレーゼに迫ります。ここからは延々のバトル。コーナーでは明らかにチーヴァーが速いのですが、ルノーエンジンのパワーに及ばずスリップストリームに入れません。それでもあの手この手で執拗なアタックを繰り返すも、どうしても抜けない。結局酷使したブレーキが限界に達してバトルはそこまで。3位キープに徹して見事表彰台を勝ち獲ったのです。
しかし、これがおそらく最後の表彰台になるだろうという気はしていました。ハンガリーではタイヤ無交換作戦で臨み表彰台を狙えるポジションまで上がるも、最終ラップでアラン・プロストに抜かれて5位。最終戦アデレードでは豪雨の中4位まで上がるものの、ミスファイアに悩まされて後退。結局スピンを喫してエンジンがストール、リタイアとなって彼はF1キャリアを終えることになりました。
その才能と実力に見合う成績を残せなかったチーヴァーですが、このアデレードを含めてオンボード映像は非常に見応えがあります。暴れるマシンを捻じ伏せるかのようなドライビングは圧巻で、天才肌の面目躍如と言えるのではないでしょうか。中でも83年デトロイトにおける雨中のオンボード映像はスリリングかつエキサイティングです。
それにしてもフェニックスでパトレーゼを抜いていたら、私の投稿が全国のF1ファンに認知されることになっていたのは間違いないでしょうね。チーヴァーの2位を予想するなど私だけだったのでは? チーヴァー同様運のない私でした。
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