G-FTB5DFYZ60

ヘッダー

オーバーステア? アンダーステア?

F1マシンを駆るドライバーたちの感覚は、常人には推し量れない特別なものであることは言うまでもありません。レース活動には資金が必要で、家庭が裕福であったり有力なスポンサーを掴んでいたりすれば有利ですが、それだけでトップカテゴリーまで伸し上がることはできません。天賦の才は必要不可欠です。

端的に言えば、次のコーナーをどのくらいのスピードで進入すればクリアできるのか、その為にはどこでブレーキングを開始すれば間に合うのかを判断する能力でしょう。ディディエ・ピローニは、これを「奥行き感覚」と説明していましたが、なるほど非常にわかりやすい表現だと思います。秒速100m近い世界ですから一瞬の遅れがコースアウトに直結します。マシンの剛性やタイヤ・ブレーキの性能、路面状況などあらゆる要素を織り込んで判断するのですから、私のような並のドライバーでは限界を探るのが精一杯でしょうね。そこから更にタイムを伸ばすなど思いもよりません。

スピードの申し子の集まりですから、ドライビングスタイルとマシンとの相性も影響するでしょう。例えばティレル時代のジャン・アレジは、もしマクラーレン・ホンダ乗ったらアイルトン・セナを脅かすのではないかと思うくらい速かったですが、後にチームメイトになったアラン・プロストやゲルハルト・ベルガーとのタイム差を考えると一過性のものに過ぎず、たまたまティレルのマシンとの相性が抜群だったのではないかと思うのです。
以前の記事で1989年におけるエディー・チーヴァーの予選での絶不調は、コックピットの狭さだけでなく彼のクラシックなドライビングスタイルが最早最先端のマシンに合わなくなってしまったのではないかと書きました。これにはそれを裏付けるかのような話があります。

この年のフランスGPをチームメイトのデレク・ワーウィックが欠場、代わりにマーティン・ドネリーがスポット参戦して予選でチーヴァーを大きく上回る14番グリッドを獲得します。ドネリーはこれがデビュー戦とはいえ、ジョニー・ハーバートやアレジと並ぶ新時代の旗手と目されていたドライバーですが、スタート直後にマウリシオ・グージェルミンが宙を舞う大クラッシュの煽りを受けてマシンが損傷、チーヴァーのスペアカーで出走し決勝で全く振るわず12位に終わります。レース後に
「参ったのはエディーがスペアカーをオーバーステアにセッティングしていたことだよ。苦手なんだ。嫌いなんだよ」とコメントしているのです。

この時代タイヤ性能は日進月歩で進化し、チーヴァーがデビューした頃より遥かに優れたものになっていました。速く走るには格段に向上したグリップ力を最大限生かすしかなく、ドリフトさせるような走法ではタイムが出ないものになっていたのです。もちろんドライバー全員が承知していたはずで、スペアカーのセッティングはチーヴァーの感覚ではニュートラルに近いものだったが、ドネリーにとってはオーバーステア以外の何物でもなかった。そういうことだったのではないかと思うのです。

似たような話は他にもあって、F1界で長くメカニックとして活躍した津川哲夫さんはベネトン時代、テストでティエリー・ブーツェンがドライブしたところ、すぐに戻ってきて「オーバーステアが酷すぎて走れない」と吐き捨てたと。同じマシンを全くいじらずに今度はアレッサンドロ・ナニーニが乗ると「アンダーステアが強すぎる」と言ったと雑誌のインタビューで目にしました。つまりハンドリングなどと言うものは各ドライバーの感覚次第で絶対的なものではないのです。

もちろん全てはマシンのパフォーマンスを限界まで引き出す能力があっての話ですから、常人の理解を超えるレベルなのは間違いないです。ただ10人中9人が自分と異なる意見でも、根拠なくそれに迎合する必要はなく自分に自信を持つことが必要と理解する上では日常生活にも当てはまると思います。

【送料無料】ホビー 模型車 車 レーシングカー フェラーリコレクションフェラーリボックスオンferrari f1 collection ferrari 126 c2 1982 didier pironi 143 in box価格:17,980円
(2022/7/2 13:31時点)
感想(0件)

F1

Posted by hiro