G-FTB5DFYZ60

ヘッダー

「ブレイディー法」と銃規制の今後

1993年11月24日、アメリカでブレイディー法が可決されました。当時の民主党ビル・クリントン政権下で制定されたこの法律は、時限立法だったため共和党に政権が移ると延長されず、2004年に失効することになります。

「ブレイディー法」は銃販売店に対する規制であり、所持や携行については州ごとに法律が違うこともあって効力を疑問視する声も多く、研究によっては「銃器による自殺の削減には関連するが、殺人率とは関連しない」と結論付けていますが、これはどうでしょう? 法律の施行後、銃の所持率と殺人事件の増加率が下がったのは事実ですからね。何よりも規制の範囲が限られるとはいえ、連邦法として成立した意味は大きかったと思うのです。州単位でなくアメリカ合衆国として銃規制に踏み出したのですから。この流れを止めてしまったのが、共和党にシンパの多い全米ライフル協会をはじめとする強硬な銃規制反対派の圧力だったことは想像に難くないですね。

それにしても、アメリカ人の多くが銃規制に対して頑なに反対なのは理解に苦しみますよね。連年銃乱射事件が発生し、その頻度は増すいっぽうに見受けられるのにかかわらずです。そんな理不尽な事件が日本で報道されるたびに銃規制を求める一部の声が取り上げられはするものの、それが大きなうねりにはなっていません。合衆国の成立に至る歴史の中で、銃が大きな役割を果たして「フロンティア精神」の象徴となり、自分の身を自分で守るという意識が大きなアイデンティティーになっていることはわかります。また銃社会はアメリカに限ったものではなく、日本のように銃による犯罪に巻き込まれる心配なく日常生活を送れる国は希少でしょう。とはいえ乱射事件の発生率はアメリカが他を圧していますよね。これはやはり何かが間違っていると考えるのが自然だと思うのです。

護身のための銃携行が合法であっても、乱射事件においてその場に居合わせた一般市民によって犯人が制圧された例を私は知りません。突然周囲が修羅場と化したら、おそらく逃げるのが精一杯で効果的な反撃を試みるなど元軍人でもない限り不可能でしょう。明確な殺意を持った相手に狙われたなら素人には対抗できないと考えるべきで、結局警察組織などに頼らなければならないという現実が、銃規制反対派の論理破綻を物語っているのではないでしょうか。

もちろんアメリカは広大ですから害獣から身を守るために銃が必要不可欠な地域もあるでしょうが、何の対策も講じなければ犠牲者は今後も増えていくはずです。少なくとも公共施設への持ち込みを規制するだけでも潮目を変えることができるのではないかと思うのです。。伝統を重んじることも大事ですが、やはり時代に合ったものにアレンジしなければならないのは明らかです。

「ブレイディー法」は81年に起きたレーガン大統領暗殺未遂事件で巻き添えになったジェイムス・ブレイディー大統領報道官に因んで名付けられたものです。半身不随なった彼は共和党員でありながら銃規制を働きかけ「ブレイディー・キャンペーン」という組織を主導しました。銃規制に反対するロビイストたちは、もし身内が被害者になっても頑なに拒むのでしょうか? 「自衛権も持っているにもかかわらずに自分の身を守れなかったのは自己責任だ」と割り切れるほどなら、それはそれで畏敬の念を覚えますけどね。

市民と武装 アメリカ合衆国における戦争と銃規制 [ 小熊英二 ]価格:1870円
(2024/11/24 09:22時点)
感想(0件)

現代,米国

Posted by hiro