史上最低のアメリカ大統領
ベストを選んだ後はワーストをとなるのは至極当然ですが、これには全く悩みません。ダントツでドナルド・トランプです。ロナルド・レーガンは私の危惧をよそに素晴らしい指導力を発揮して「強いアメリカ」を復活させてくれましたが、トランプは予想通りアメリカを滅茶苦茶にしました。
私がトランプを知ったのは1980年代、アメリカンスポーツの貴重な情報源であったテレビ朝日『CNNデイウォッチ』がきっかけで、その派手な私生活と物議を醸す言動が度々取り上げられていたのです。若くして既に社交界の名士ではありましたが、私の受けた印象は「派手好きで自己顕示欲が強く胡散臭い、上辺だけで中身のない鼻持ちならぬ人物」といった感じで嫌悪感を覚えたものです。まさかこんな人物が30年後に大統領になるなど夢にも思っていませんでした。
2016年大統領選挙での予想を覆す当選について日本のメディアは「隠れトランプ支持者」の存在をあげていましたが、私は首をひねったものです。トランプも対立候補ヒラリー・クリントンも好感度が低くアンチが多い、つまり積極的な支持者は少ないとされていました。そんな中投票日直前にヒラリーの当選は確実との報道がなされたのです。私はこれが選挙結果に大きく影響したのではないかと思いました。要するに「どちらも好きではないが、どうせヒラリーが勝つならトランプに入れてしまうか」と考えた有権者が相当数おり、彼らが雪崩を打ってトランプに投票した結果番狂わせが起きたのではと… 直前の世論調査で劣勢でも逆転勝利する例が少なからずあるのは、有権者の「判官贔屓」的心理が原因とするのは大胆過ぎる推論でしょうか？
選挙結果については本当に驚愕しました。信じられなかったです。このような人物を大統領に選ぶアメリカ国民の見識を疑いましたし、私が好きだったアメリカはいったい何処へ行ってしまうのか心配でした。もちろん杞憂であることを願いましたが、それはすぐに打ち砕かれたのです。
「ああ、やっぱり」と感じたのは、慣例であるはずの納税記録公開を就任後も頑なに拒否し続けたことです。このような些細なことを拒むのは、やましいことがあるからに他なりません。つまり叩けばいくらでも埃が出ることを本人が良く分かっているということです。これだけでも支持率が急落してもおかしくないですが、そうはならない。理解に苦しみましたね。共和党の重鎮たちも人気が高いと見るや挙って迎合に走る。まるでアメリカ全体が伝染病に侵されたのではないかと感じたほどです。
ひょっとしたら彼が大統領を目指したのは、自身の不正行為を闇に葬ろうとしたためかもしれません。そのためには最高権力者に上り詰めてもみ消さない限り、いずれ白日の下に晒されてしまうと。再選を狙った2020年の選挙結果で敗北が確定しても、異常なまでに大統領の椅子に執着したのはそのためかと思えます。票が盗まれたなどと声高に訴えましたが、そもそもそのような考えに至るのは自身に邪さが宿っているからで、良識ある人物ならば確たる根拠もなく盗っ人呼ばわりするはずがありません。歴史的接戦となった2000年大統領選挙において得票数で上回りながら敗れたアル・ゴアは、手作業再集計こそ求めましたが票が盗まれたと騒いだりはしなかったです。
結局彼の信条は「アメリカ・ファースト」ではなく「自分ファースト」だったのです。誤りを決して認めようとせず、何か不都合が起きれば全て他者に責任転嫁して切り捨てるだけ。暴君そのものです。これほど身勝手な人物が超大国の最高権力者であることに呆れもし、寒気すら覚えたものです。
在任中の4年間、アメリカから入ってくるニュースに拍手喝采したことは一度もありません。幻滅・嫌悪・諦念だけです。もし再選されていたら、私は本当にアメリカが嫌いになっていたでしょう。悪夢が4年で終わったことに胸を撫で下ろすとともに、大好きだったアメリカが戻ってくることを信じて今もそれを願っていますが、心配なのは彼が過去の人物にはなっていないことです。驚くべきことに未だ熱狂的な支持者がおり、再出馬も取り沙汰されています。仮にそうなっても共和党には早く目を覚ましてほしいですね。
そういった観点からも、今回の中間選挙を非常に注視していました。幸いなことに共和党の大勝とはならず、トランプ派の勢いが削がれた形になり取り敢えずは安堵しています。これを機に暴力を容認して分断と対立を煽る危険な人物を排除し、かつてアメリカという国が持っていた最大の美点、危機の際しての協調と団結を取り戻すことを切に願います。トランプ政権時代共和党は完全に「トランプ党」でしたが、リズ・チェイニーはじめ良識ある政治家が残っていますから、是非とも共和党を本来あるべき姿に立ち返らせてほしいものです。
| ドナルド・トランプの危険な兆候 精神科医たちは敢えて告発する [ バンディー・リー ]価格:2,750円 (2022/11/5 16:24時点) 感想(0件) |
