ペキンパーの執念
12月28日は、サム・ペキンパーの命日です。斬新で独特なバイオレンス描写でアクション映画に新境地を切り開いた映画監督ですね。その過激な演出は物議を醸したものの、後世に多大な影響を与えました。
数々の傑作がありますが、私が最も好きなのは『ワイルドバンチ』ですね。とにかく痛快です。登場する西部の男たちは粗暴で野卑、一筋縄ではいかない人物ばかり。北野武監督の『アウトレイジ』ではないですが、全員悪人といった感じです。たった4人で大隊規模のメキシコ軍を全滅させ道連れにして死んでいくという結末も、ワルばかりですから感傷的にはなりません。
このクライマックスにおける銃撃戦の迫力には目を見張るものがあります。ペキンパー得意のスローモーション撮影がふんだんに使われ、劇的効果を増幅しています。今ではペキンパーの代名詞となっているスローモーションの多用は、1965年に監督した『ダンディー少佐』でプロデューサーと衝突したためにハリウッドから干されてしまい、ブランクを作った間にアーサー・ペンが67年に『俺たちに明日はない』のラストシーンで取り入れ衝撃を与えたことで、先を越される結果になっていました。『ワイルドバンチ』の2年前です。ペキンパーはこれを非常に悔しがったようで、まるで鬱憤を晴らすかのように冒頭の銃撃戦からこれでもかというほど多用しています。またクライマックスの銃撃戦の発端となった、メキシコ軍に捕らえられたエンジェルがマパッチ将軍に喉を切り裂かれるシーンも、少年だった私をドキリとさせるに十分なもので印象に残っています。さらにはガトリングガンを登場させたのも良かったですね。満身創痍になったウォーレン・オーツが盲滅法に乱射してメキシコ軍兵士を薙ぎ倒していく様には、滅びの美学のようなものを感じます。
ウィリアム・ホールデンが演じた主人公パイク役には、当初リー・マーヴィンが予定されていたようです。『特攻大作戦』で陸軍刑務所に収監されていた札付きのワルどもを、その腕っ節で従わせる人間凶器のようなマーヴィンの姿を思うと、この役はホールデンよりもマーヴィンのほうがハマっていたでしょう。何故実現しなかったのかわかりませんが、是非見てみたかったものです。
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