NFLファーステストマン
1980年代初頭NFL最速の呼び声が高かったのは、前々回の記事で紹介したジョニー・ジョーンズ(ジェッツ)、トニー・ドーセット(カウボーイズ)に加えて81年ドラフト1巡5位でコルツに指名されたカーティス・ディッキーです。モスクワ五輪代表候補だった彼は100mで10秒11、40ヤードで4秒26というタイムを持っていました。しかしドーセットのアクセリングは尋常でなく、スクリメージラインを抜けるスピードは他の追随を許さないものがありましたし、一度抜かれたら追いつけるDBはいないと評されるスプリント力を兼ね備えていたのです。つまり単純な走力でなく、アメリカンフットボールという競技に必要なスピードを持つという点で史上最高と考えています。
レナルド・ニアマイア―(フォーティーナイナーズ)とウィリー・ゴールト(ベアーズ)が相次いでNFL入りしたことで「誰がいちばん速いのか」という興味が否応なく深まったのは当然の流れですね。ニアマイア―はNFLで通用しなかったですが、代わりにゴールトを脅かしたのがダレル・グリーン(レッドスキンズ)なのです。
グリーンの100mベストは10秒08でゴールトの10秒10を上回っていますが、国際大会での実績はゴールトが遥かに上です。さらにアメリカンフットボールでもゴールトがメジャーカンファレンスSECの名門テネシー大のオールアメリカンなのに対し、グリーンはディビジョンIIのテキサスA&M大キングスヴィル校です。身長が173cmということもあり、1巡で指名されたこと自体が驚きだったようです。要するに知名度の面ではゴールトが全国区、グリーンはローカルでしかなかったということですね。事実私はグリーンを大学時代、名前さえ知りませんでした。
84年のプレーオフで両者がマッチアップした試合を見ましたが、第3Qにフックしたゴールトにパスがヒット、付いていこうとしたグリーンが足を滑らせてしまい75ヤードの独走タッチダウンとなりました。DB陣をぶっちぎったスピードは流石でしたが、すぐに起き上がったと思われるグリーンが一瞬画面に映り込むほど猛追していたのです。ゴールトが敵セイフティーをかわすために右へカットしたのですぐに消えてしまいましたが、完全にコケた状態から迫ったグリーンはやっぱり相当速いなと感じましたね。因みにゴールトのパスレシーブは1回のみでしたから、このプレー以外はグリーンがシャットアウトしていたことになります。
この時期に始まったNFLファーステストマンコンテストでも両者は対戦していますがグリーンが勝っています。しかもグリーンは4回出場して負けなしで、ロン・ブラウンにも勝っています。こうしたことから公平に考えると最速はグリーンだったと認めざるを得ないでしょうね。40ヤードのベストは4秒09とも言われていますが、確実なのは4秒15みたいです。何れにせよとんでもないタイムで、40ヤードならばカール・ルイスでも勝てなかったかもしれません(因みにゴールトは4秒17)
彼らに続いて84年ロサンゼルス五輪100m銀メダルのサム・グラッディー、92年バルセロナ五輪200m銅メダルのマイケル・ベイツ、400mリレーメンバーのジェイムス・ジェットとジェイムス・トラップなどがNFL入りし、この頃はまさしく世界的スプリンターの宝庫と言える華やかさでした。そのスピードはフィールドに現れるだけで何かやってくれるのではないかと期待させ、注目されたのです。
その後は陸上競技のプロ化が進んだことによって、アメリカンフットボールとの二足の草鞋を履く選手は激減しています。今後世界的スプリンターがNFL入りする可能性は極めて少ないでしょう。これも時代の流れとはいえ寂しい気がします。
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